イラストレーションや絵画を始めたいな、と考えている方でよく『デッサンのやり方が判らない』という質問をお見かけするので。
私なりにデッサンのコツをまとめておきたいと思いました。

デッサンとは?

まず、スケッチやクロッキーとデッサンはどう違うのかという事から。
デッサンは『対象物の構造を理解する為の設計図』だと思うと判りやすいです。

基本的にスケッチもクロッキーも絵の設計図なのですが、スケッチは写真に近く『見えたままの様子を写す』練習で、クロッキーは『フォルム(アウトライン、とも言えます)を素早く正確に捉える』練習だと考えて下さい。スケッチは2Dの、クロッキーは1Dの設計図だと言えると思います。

で、デッサンは3Dの設計図です。
例えば缶ビールをデッサンする場合、
・缶ビールは円柱形
・缶ビールは金属製
・この缶ビールが置いてある条件
等が見る方に分かりやすく描いてあるのがデッサンと言えます。
最後の『缶ビールが置いてある条件』というのは光源がどこからか、光量の強さ、置いてあるのは机の上なのか紙が敷いてあるのか、等を含みます。
突き詰めて行くときりがないのですが基本的にはそれがデッサンの意味だと思います。

始め方

用意するものは紙と鉛筆、練り消しゴムです。画板があれば描きやすいです。

紙はケント紙が丈夫で良いですがスケッチブックでも描けなくはないです。
鉛筆はH~6Bの間位で数本用意します。
例えばHB、B、2B、4B等。好みで良いと思います。

最初のモチーフは、美術室に置いてあるような石膏製の立方体や球体、四角錐やら円柱がベストです。
物の形は概ねこれらが組み合わさって出来ているので、基礎練習には最適です。

無ければ紙で作ります。
球体は白い卓球ボールが良いです。
白を使うのは、陰影が見やすいからです。

手順

まずは形をとります。
対象物を良く見て、成り立ちを考えます。
円柱なら上下に円形の面と腹になる面で出来ていますが、横から見た時に円の面は楕円形に見えます。
楕円形の大きさは上下とも同じか、柱の横幅に対して高さは比率が合っているか等の注意をします。

モチーフの肩は右か左に傾いていませんか?
紙の上下に平行になるように描いて下さい。最初は定規を使って、計って正確に描くのも手ですよ。

比率は利き目を使って、鉛筆等で測ると良いでしょう。
形をとる時にも、見たまま描くというよりも測った比率で正確に描けているかを重視します。

たまに遠目から見る癖をつけて全体のバランスを取ります。
紙に対して平行と垂直が正しいかも確認しましょう。これが出来ていないと、モチーフがぐらついて見えます。

形をとる時にどれだけ正確かで、デッサンの出来は八割決まってしまいます。塗りで立体感をごまかさず、形にこそ時間を割いてモチーフを理解していって下さい。

陰影をつける

形が写せたら階調を塗っていきます。
モチーフの中で一番白い所と一番暗い所を探します。一番光が当たっている部分と一番陰になっている部分です。
最も白い所は紙の色だと思って下さい。
それ以外はいくら薄くても必ず色がついている事になります。

鉛筆の濃さも利用して描き込んでいきます。
描き方は様々です。鉛筆を立てて、漫画のかけ網のようにして塗る方法、ねかせて広い面を塗る方法等、色々試してみて下さい。

1つの方法に絞る必要は無く、モチーフの質感によって変えたりも出来ます。
白いものでも、硬質な石膏と柔らかいティッシュペーパーでは違いを表現する事が大事です。

練り消しゴムも、消すだけでなく便利な道具です。
尖らせて白い線や傷を描き入れたり、平らにして画面を叩き陰を薄める等が可能です。

面を見る

デッサンでは面を表現する事も特に重要です。
完成に近づいてきたら、モチーフの輪郭を消していきます。石膏に実際には黒いアウトラインは存在しないハズなので、練り消しゴムで叩いたりして薄くします。

例えば立方体を描いたとして、暗い面と明るい面との境目は階調の違いで表現するのが良いでしょう。
形をとった時の輪郭線は目立たなくなる方が、デッサンとして違和感無く仕上がります。

更に深く理解する

そこそこ陰影が描けたら、写り込みや反射も注意して見ます。
写り込みとは、金属やガラス等を描いた時に周囲の色がモチーフに写っている状態。
反射とは、モチーフに周囲の色や光が干渉している状態です。
紙の上に物を置いた時、紙が光を反射して物体の下面がわずかに白くなります。
デッサンではこの現象を描き込む事で、より立体感を出す事が出来るのです。
モチーフを更によく観察して、写り込みや反射を探してみて下さい。

背景は基本的にあまり描き込みません。
モチーフを邪魔しない程度に、下に落ちる影を描く位です。
先に挙げた反射等を下の陰に応用して、立体感のある陰を表現する事も出来ます。

完成

仕上げにもう一度全体を遠目から見て、立体として成立しているかを確認しましょう。
白いものがちゃんと白く表現出来ていますか?画面への収まり方は大き過ぎたり小さ過ぎたりしないでしょうか。
モチーフの白黒写真を撮って見比べる方法もあります。

背景が鉛筆の粉で汚れていたら、練り消しゴムで丁寧に消します。
これで完成です。


最後に思い付く注意事項を書きます。

デッサンは時間のかかる練習です。
陽当たり等が変化してしまう事もあります
ので、変化の少ない条件の方が描きやすいでしょう。

自分独りでデッサンをしていると、正確なのかくるっているのか判らなくなりがちです。出来るだけ人に見てもらえるようにして意見を貰ったり、更に勉強されたいなら教室やサークル等で批評会に参加されると良いと思います。

人物を描く時もデッサンは役に立ちますが、クロッキーも重点的に学ぶのをおすすめします。
人物は目の前にモデルを置き、時間をかけて仕上げるのは難しくなってきます。クロッキーなら短時間でポーズ数を多く描けて、人体の構造を理解するのにも良いと思うからです。
もちろん人物デッサンが出来る教室も多いです。

自分がデッサンしてきて解った事を大まかに書いてみました。
私見も少し入れていますのでご意見は色々かと思いますが、読み流す程度で参考にして下さい。
そしてこれから始める方はぜひ自分のやり方を開発して下さい。